2024の映画まとめは、出すタイミングを失ってしまったので、2024年と2025年をまとめて公開。
2023年は61本。2024年は42本。
2024/2025に観た全映画のリストは記事の末尾にあります。
今年は自分の人生で一番劇場に足を運んだ年だったけど、全体の本数は少なくなったみたいです。
みなさま、本年も大変お世話になりました。
来年も何卒よろしくお願いいたします。
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【TOP15】
1. ハッピーアワー(2015) / 濱口竜介
2. 東京物語(1935) 4Kデジタル修復版 / 小津安二郎
3. 灼熱の魂(2010) / ドゥニ・ヴィルヌーヴ
4. HAPPYEND(2024) / 空音央
5. 牯嶺街少年殺人事件(1991) / エドワード・ヤン
6. 悪は存在しない(2023) / 濱口竜介
7. 瞳をとじて(2023) / ビクトル・エリセ
8. 穴(1960) / ジャック・ベッケル
9. ポンヌフの恋人(1991) / レオス・カラックス
10. 旅と日々(2025) / 三宅 唱
11. 天使のたまご(1985) / 押井守
12. 劔岳 点の記(2008) / 木村大作
13. 哀れなる者たち(2024) / ヨルゴス・ランティモス
14. ノーカントリー(2007) / ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
15. 美しき仕事(1999) 4Kレストア版 / クレール・ドゥニ
1.ハッピーアワー(2015) / 濱口竜介
人生は出会いと別れでできている 。
それは予期せずやってきて、自分の人生の舵を勝手に乱して、どこかに消える。
記号化された人生のイベントよりも、目の前で話している人の表情と言葉が自分の人生をぐわって持っていってしまう。
それは、とてつもなく情緒的な瞬間。
そのような瞬間こそが、人が死んでも残る美しさだ。
沈む日や、満ちていく潮のように、それはそこに在る。
あらゆる意図やアテンションから解放された存在の美しさ。
濱口竜介はそういったものを、数時間のフィルムに凍結するという、奇跡的な才能を持っている。
そしてハッピーアワーは、いわゆるプロの女優ではない主婦達に、その主婦の生活を演じさせることで、現実と想像の輪郭すら溶かした。
濱口竜介は、撮影の場作りとして、”演じさせる”ことすらも廃していったという。
劇場を出ていく時、
映画、想像。街、現実。
それらの区別は溶けて無くなっていた。
2.東京物語(1935) 4Kデジタル修復版 / 小津安二郎
小津安二郎はなぜ、時代を超えて愛されるのか。
小津は、"洗練と哀愁"という観点から、日本の美学の結晶と評されることがある。
ただ、小津はそういった日本の美学を扱いながら、それを一歩引いてみるような、他なる存在としての語り手としての客観性こそが、彼の真髄なのではないかと僕は思う。
日本の美 学をなぞるだけで、そう簡単に時代は超越できない。
黒澤作品が王道としての「主なる映画」のならば、小津作品は、濱口竜介の言う「他なる映画」の象徴。
"存在を語る映画"としての極北に小津安二郎がいる。
本作は、その小津のひとつの到達点だ。
徹底的なまでに献身的な、原節子演じる紀子の人間像が、"記号"ではなく、対話に根差した"人と人の話"として展開される時、この作品に時代を越える生命力が吹き込まれる。
3.灼熱の魂(2010) / ドゥニ・ヴィルヌーヴ
僕はとかくシリアスな人間である。
そして、それをたびたび反省する。
ただ、ヴィルヌーヴを観ているとそんな悩みは杞憂だと気づく。
彼は初期の作品で、一切の欺瞞を捨て、"絶望の最果て"を描く。
僕の言うシリアスなど、表層の薄っぺらにすぎない。
本物のシリアスさと言うものは、果てしなく黒い。
全ての光を吸い込んで、奥行きが認識できないほどに黒い。
タールのように。ブラックホールの核のように。
ドロドロと流れている。
それらが物質の果てなら、ヴィルヌーヴが描くのは、社会構造の果てだ。
"灼熱の魂"は、この世界の片隅で、誰にも語り継がれない"絶望の最果て"をフィルムに克明に焼き付けた。
このようなシリアスさを持ってして、よく彼は正気 で生きていられるなと思う。
この映画の公開時、彼が後にDUNEやブレードランナーを監督することになるとは誰も思わなかっただろう。
だが、それら映像化不可能といわれた作品を捌く無二の手腕も、
それら灰塵の地層の上に成り立っていると思えば、素直に理解ができる。
4.HAPPYEND(2024) / 空音央
2024年と2025年は、二、三十代の若い監督に作品にぶっ飛ばさた。
往年の映画技法から解放されたテーマやカットを観ていると、体を澄んだ良い風が吹き抜けたような気がした。
その中でもHAPPYENDは特に良かった。
"問題は不定形である。"という、冷静な観察眼が好きだ。
絵作りにおいて、あまり似た映画が思いつかない。
素晴らしい風が吹いている。
ハリウッド映画は終焉に向かっているが、このような心地いいニュースもある。
5.牯嶺街少年殺人事件(1991) / エドワード・ヤン
エドワード・ヤンは、社会的なストラグル(もがき)を、個人的な視点から見事に描写する。
社会の歪みを請け負った少年少女の物語と言うと、暗く、重く感じるだろ う。
でも、それが現実に根ざした話であればあるほど、そのような少年少女にも、主観的な愛、主観的な怒り、主観的な悲しみ、主観的な喜び、それら全てが人生のレールの上に点々と確かに存在しているはずなのだ。
要約されない人生のきらめき。
エドワード・ヤンはそれをフィルムに凍結する。
この手腕は濱口竜介にも通づる。
濱口竜介が自分の映画人生に、エドワード・ヤンをたびたび引き合いに出すのも納得する。
6. 悪は存在しない(2023) / 濱口竜介
これは単体の記事にした
「私も悪で、あなたも悪。私も正で、あなたも正。」
そんな話が、世の中では意外に通じない。
7. 瞳をとじて(2023) / ビクトル・エリセ
この世に平穏があるならそれはどんな形をしているだろうか。
それがビクトルエリセの描く、静かで、かつ澄んだ暗さに満ちた希望の物語であるならどんなにいいだろう。
8. 穴(1960) / ジャック・ベッケル
映画に壮大な舞台はいらない。
小さな雑居房と、刑務所の地下。
白黒の画面。
それを豊かに切り取る監督の慧眼があれば映画は成立する。
良い映画は気持ちいい。
この映画は、どこをどんな切り口で開いても本当に気持ちがいい。
9. ポンヌフの恋人(1991) / レオス・カラックス
「ロマンチズムとは、私とあなたの話であって、世界などどうでもいい」
このスタンスは、シンプルでありながら、話を簡単に安くする。
でも、ロマンチズムを煮詰めた上で、かつ、安売りする気は一切無いのが、レオス・カラックス。
実際のところ、世の大半のロマンチズムは薄いから安い。ただ、それだけに過ぎない。
そんな勝気な兄貴の言葉を僕は追っている。
10. 旅と日々(2025) / 三宅 唱
日常から来て、日常に帰っていく。
それがたまらなく心地いい。
アンビエンスとしての映画。
11. 天使のたまご(1985) / 押井守
インスタント〇〇。ショート〇〇。の台頭に疲れた人は、
全員、押井守の作品にしゃぶりつくべき。
押井守の道に親切な案内人はいない。
ただその代わり、そこは間違いなく、時間をかけるだけの価値がある行路だ。
アニメ界における陽の雄が宮崎駿なら、隠の雄は押井守。
これに間違いはない。
12. 劔岳 点の記(2008) / 木村大作
明治末期、前人未踏の剱岳にトライした測量士たちが、満身創痍の中、
山頂で遥か遠い時代の行者の杖を発見するという結末が、シンプルながら良い。
CGを使わず、剱岳の脅威的な自然の中で撮影を完遂した点が説得力を高める。
ウォッシングされた自然ではなく、自然の暴力を見事にフィルムに収めている。
黒澤組の文脈を継承した本作。
2008年の作品ながら、古き良き日本映画の魂を感じる。
13. 哀れなる者たち(2024) / ヨルゴス・ランティモス
ヨルゴス・ランティモスの比較として、ウェス・アンダーソンを挙げる人を見かけるけど、ヨルゴス・ランティモスの絵作りには、フェティシズムとは違う、何か強い必然性のようなものを感じる。
思考が幼児で、身体が大人という女性がセックスしまくる話が、問題になるどころか、成長譚として評価を受けていることは、現代において全くもって特異な状況だ。
ヨルゴス・ランティモスの奇怪な世界観に僕らはいつの間にかキャリーされている。
高揚感さえ覚えているのだ。
全くもって巧妙で、圧倒的な才能。
14. ノーカントリー(2007) / ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
ノーカントリーは100年後も残るサスペンス映画の傑作だ。
この作品はヒッチコックやキューブリックの隣に並んでも遜色ない。
2000年代は軟派な映画が多い時代と個人的には感じている。
その世相の中で、これを結実させたコーエン兄弟には信頼しかない。
15. 美しき仕事(1999) 4Kレストア版 / クレール・ドゥニ
人が履行不可能な、肥大化した合理性の脅迫が今の時代ならば、性と政治思想を高度に練り上げた三島由紀夫のような文学性が、カウンターとして勃興するのは必然と言える。
本作は、ジブチの真っ青なロケーションが映画全体をエモーショナルに牽引しつつも、この物語の本質には、軍隊、マチズモ、筋肉、精神といったキーワードが並ぶ。
僕はここに三島由紀夫を想起せざるを得ないのだ。
しかし、そのようなドロドロとしたものを、
ジブチの青い景色が、やはり全て覆い尽くし、
強烈に浄化して、浮遊感のうちに空に舞い上げ、風に消してしまう。
このような感傷の大波のような映画が大好きだ。
aftersunのシャーロット・ウェルズ監督がフェイバリットに挙げるのも納得。
隠れた名作だと思う。
以下、2024年に観た映画の全リスト
小説家の映画 / ホン・サンス
めまい / アルフレッド・ヒッチコック
A KITE (ORIGINAL ver) / 梅津泰臣
PERFECT DAYS / ヴィム・ヴェンダース
ミッドサマー / アリ・アスター
COWBOY BEBOP 天国への扉 / 渡辺信一郎
傷物語 こよみヴァンプ / 尾石達也
人狼 / 沖浦啓之
千年女優 / 今敏
浮雲 / アキ・カウリスマキ
スチームボーイ / 大友克洋
スカイ・クロラ THe Skey Crawlers / 押井守
STOP MAKING SENSE / ジョナサン・デミ
哀れなる者たち / ヨルゴス・ランティモス
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー / 押井守
DUNE 2 / ドゥニ・ヴィルヌーブ
THE DEAD DON'T DIE / ジム・ジャームッシュ
ボーダーライン / ドゥニ・ヴィルヌーブ
夜明けのすべて / 三宅唱
名探偵コナン 天国へのカウントダウン / こだま兼嗣
ファニーゲーム / ミヒャエル・ハネケ
名探偵コナン 瞳の中の暗殺者 / こだま兼嗣
枯れ葉 / アキ・カウリスマキ
HEAT / マイケル・マン
悪は存在しない / 濱口竜介
機動警察パトレイバー THE MOVIE / 押井守
THE GUILTY / グスタフ・モーラー
機動警察パトレイバー 2 THE MOVIE / 押井守
ミュンヘン / スティーブン・スピルバーグ
対峙 / フラン・クランツ
関心領域 / ジョナサン・グレイザー
違国日記 / 瀬田なつき
コンスタンティン / フランシス・ローレンス
CURE / 黒沢清
レイジング・ブル / マーティン・スコセッシ
小早川家の秋 / 小津安二郎
わたくしどもは / 富名哲也
ももへの手紙 / 沖浦啓之
美しき仕事 / クレール・ドゥニ
WALK UP / ホン・サンス
劔岳 点の記 / 木村大作
墓泥棒と失われた女神 / アリーチェ・ロルヴァケル
羊たちの沈黙 / ジョナサン・デミ
牯嶺街少年殺人事件 / エドワード・ヤン
ルックバック / 押山清高
ナミビアの砂漠 / 山中瑶子
ムーンライズ・キングダム / ウェス・アンダーソン
オッペンハイマー / クリストファー・ノーラン
HAPPYEND / 空音央
シン・ゴジラ / 庵野秀明
ノーカントリー / ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
僕のお日さま / 奥山大史
エクス・マキナ / アレックス・ガーランド
ハッピーアワー / 濱口竜介
穴 / ジャック・ベッケル
雨に唄えば / ジーン・ケリー スタンリー・ドーネン
シビル・ウォー アメリカ最後の日 / アレックス・ガーランド
ハンニバル / リドリー・スコット
AT THE BENCH / 奥山由之
BLOOD THE LAST VAMPIRE / 北久保弘之
東京物語 / 小津安二郎
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以下、2025年に観た映画の全リスト
みつばちのささやき / ビクトル・エリセ
瞳をとじて / ビクトル・エリセ
機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Begging- / 鶴巻和哉
キャロル / トッド・ヘインズ
Broken Rage / 北野武
ファーストキス / 塚原あゆ子
PASSION / 濱口竜介
イノセンス (4Kレストア版) / 押井守
教皇選挙 / エドワード・ベルガー
カップルズ / エドワード・ヤン
新幹線大爆破 / 樋口真嗣
ミッションインポッシブル ファイナルレコニング / クリストファー・マッカリー
王立宇宙軍 -オネアミスの翼- / 山賀 博之
catch me if you can / スティーブン・スピルバーグ
激突! / スティーブン・スピルバーグ
ドラゴンタトゥーの女 / デヴィッド・フィンチャー
サマーウォーズ / 細田守
博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか / スタンリー・キューブリック
ワンバトルアフターアナザー / ポール・トーマス・アンダーソン
灼熱の魂 / ドゥニ・ヴィルヌーヴ
旅と日々 / 三宅 唱
ザ•ザ•コルダのフェニキア計画 / ウェス・アンダーソン
晩春 / 小津安二郎
BLOOD THE LAST VAMPIRE / 北久保 弘之
アマデウス / ミロス ・フォアマン
落下の王国 / ターセム・シン
天使のたまご / 押井守
アバター ファイヤーアンドアッシュ / ジェームズ・キャメロン
SAW / ジェームズ・ワン
ポンヌフの恋人 / レオス・カラックス