今年は61本でした。
ペースとしては年のはじめの方と終わりの方に多く見ていたかな。
ここ3年くらい数を意識して観てきたけど、今年のリストを振り返ると自分にとってのハズレの作品というのは出会いにくくなって、より自分にとって深く刺さると感じる作品を摘むことができるようになりつつあるかな。。
さっそくTOP10と、短評にいってみよー。
*このランキングは、新作旧作に問わず、僕が2024年に見た全ての作品から選んでいます。今年のあれよかったよねという話ももちろんしたいけど、名作といわれるあれ見てみたら本当によかったよ!という気持ちも共有したい。
TOP10+α
1.ハッピーアワー(2015) / 濱口竜介
2.東京物語(1935) 4Kデジタル修復版 / 小津安二郎
3.美しき仕事(1999) 4Kレストア版 / クレール・ドゥニ
4.AT THE BENCH(2024) / 奥山由之
5.哀れなる者たち(2024) / ヨルゴス・ランティモス
6.HAPPYEND(2024) / 空音央
7.ノーカントリー(2007) / ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
8.穴(1960) / ジャック・ベッケル
9.劔岳 点の記(2008) / 木村大作
10.牯嶺街少年殺人事件(1991) / エドワード・ヤン
11.機動警察パトレイバー 2 THE MOVIE(1993) / 押井守
12.STOP MAKING SENSE(1984) 4Kレストア版 / ジョナサン・デミ
どうしても12本から減れせなかったよ。。。ということで12本。
##1.ハッピーアワー(2015) / 濱口竜介
##2.東京物語(1935) 4Kデジタル修復版 / 小津安二郎
結構ミーハーなので、映画史上最古の100本みたいなリストを度々みるのだけど、東京物語はしばしば七人の侍よりも高い位置に評価されてた。なんなら市民ケーン等も差し置いて一位に位置づけられているリストもあるくらいで、まあ観ておくかとは思っていたのだけど、先述の濱口竜介のレコメンドで小津の作家性というものを知ったことも大きかったと思う。
この作品は、大阪に住む親夫婦が、息子娘家族に会いに来て、帰っていくというのが大筋で、非常にスローに、生活をコンコンと追って人が入れ替わっていくようなテンポを取っている。
日本家屋を撮影するために最適な方法として小津監督が発見した、"低いカメラ位置"という設計が非常に心地いい。終始収まりがいいといったらいいのか、非常に日本人の本能的な心地よさから、自然と肩の力が抜けていくような気がしてくる。
ただ、先の評価をふまえれば、これは日本人の固有な感覚を下敷きにしつつ、そうでないひとにとっても普遍的に美しいと感じるレベルまで到達しているということなのだと思う。実際に撮影の裏ではミリ単位の小道具の位置調整や、モノクロを前提とした色相調整、水を飲む所作ひとつに至っても、小津監督の異常なこだわりがあったそうだ。キューブリック的でありつつ、緊張感の様相はごく日本的であるという落とし所が稀代の映画作家たる所以なのだろう。
僕が印象深いのは、友人との再開の酒の席で、父である笠智衆とその旧友が「子どもは思い通りに育たん。でもそれも儂らも期待し過ぎで、そういうもんじゃろ」「今は親を殺す子どももいると聞く、それにくらべりゃいくらもましじゃな」といった語り合いをするシーンだ。家族とその形、カタチに幸せはあるかという問いを、この作品は描いているのだと思う。
戦争で逝去した息子嫁である原節子が本作のキーであるが、血の通っていない親夫婦に手を尽くすありようも、血の繋がりという呪いもつ家族に別の角度から救済をもたらしている。さらに、そのような異常なまでに献身的な原節子の献身性というのが、どう云う場所からやってくるのか、あるいは彼女はどう自分を保とうとしているのかという、”優しい人”のあり方について語られる終盤のシーンが、小津安二郎の観察眼を象徴している。まさに2本とない傑作。
これらに予算が下りないのは簡単にいえば、ちょっと小難しいからであって、そこを上手く見せている庵野秀明はやはり別格とえるのだと思うけど、僕の中で御三家を担う押井守が、実写でコケ続けているなんか物言うおじいちゃんという収まりになっていること、今敏のあまりに早い夭折は、大人向けアニメ映画におけるあまりに大きい損失だったと思う。ということで、押井守先生、生きてる限りはアニメでの完全新作待ってます!
以下2023年に観た映画の全リスト
小説家の映画 / ホン・サンス
めまい / アルフレッド・ヒッチコック
A KITE (ORIGINAL ver) / 梅津泰臣
PERFECT DAYS / ヴィム・ヴェンダース
ミッドサマー / アリ・アスター
COWBOY BEBOP 天国への扉 / 渡辺信一郎
傷物語 こよみヴァンプ / 尾石達也
人狼 / 沖浦啓之
千年女優 / 今敏
浮雲 / アキ・カウリスマキ
スチームボーイ / 大友克洋
スカイ・クロラ THe Skey Crawlers / 押井守
STOP MAKING SENSE / ジョナサン・デミ
哀れなる者たち / ヨルゴス・ランティモス
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー / 押井守
DUNE 2 / ドゥニ・ヴィルヌーブ
THE DEAD DON'T DIE / ジム・ジャームッシュ
ボーダーライン / ドゥニ・ヴィルヌーブ
夜明けのすべて / 三宅唱
名探偵コナン 天国へのカウントダウン / こだま兼嗣
ファニーゲーム / ミヒャエル・ハネケ
名探偵コナン 瞳の中の暗殺者 / こだま兼嗣
枯れ葉 / アキ・カウリスマキ
HEAT / マイケル・マン
悪は存在しない / 濱口竜介
機動警察パトレイバー THE MOVIE / 押井守
THE GUILTY / グスタフ・モーラー
機動警察パトレイバー 2 THE MOVIE / 押井守
ミュンヘン / スティーブン・スピルバーグ
対峙 / フラン・クランツ
関心領域 / ジョナサン・グレイザー
違国日記 / 瀬田なつき
コンスタンティン / フランシス・ローレンス
CURE / 黒沢清
レイジング・ブル / マーティン・スコセッシ
小早川家の秋 / 小津安二郎
わたくしどもは / 富名哲也
ももへの手紙 / 沖浦啓之
美しき仕事 / クレール・ドゥニ
WALK UP / ホン・サンス
劔岳 点の記 / 木村大作
墓泥棒と失われた女神 / アリーチェ・ロルヴァケル
羊たちの沈黙 / ジョナサン・デミ
牯嶺街少年殺人事件 / エドワード・ヤン
ルックバック / 押山清高
ナミビアの砂漠 / 山中瑶子
ムーンライズ・キングダム / ウェス・アンダーソン
オッペンハイマー / クリストファー・ノーラン
HAPPYEND / 空音央
シン・ゴジラ / 庵野秀明
ノーカントリー / ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
僕のお日さま / 奥山大史
エクス・マキナ / アレックス・ガーランド
ハッピーアワー / 濱口竜介
穴 / ジャック・ベッケル
雨に唄えば / ジーン・ケリー スタンリー・ドーネン
シビル・ウォー アメリカ最後の日 / アレックス・ガーランド
ハンニバル / リドリー・スコット
AT THE BENCH / 奥山由之
BLOOD THE LAST VAMPIRE / 北久保弘之
東京物語 / 小津安二郎